この記事の著者:

受験ペアレントアドバイザー 前島 健太郎(MAESHIMA Kentaro)
元大手予備校職員元私立高校事務職員現役大学職員
という、受験を取り巻く3つの現場を経験。教育現場を最前線で見てきた経験から、現場では言えない「リアル」な意見をお伝えしています。

「大学受験で親は何をしてあげればいいんだろう」

お子さんの受験が近づくほど、そんな焦りを感じている保護者の方は多いのではないでしょうか。

ネットで調べると「励ましてあげましょう」「静かな環境を整えましょう」といったアドバイスはたくさん出てきます。もちろんどれも大切なことです。


ただ、正直に言うと、それだけでは本当に合格に向けて万端の準備ができているのか不安ではないでしょうか。


私は予備校のスタッフとして数えきれないほどの保護者面談をこなし、私立高校の事務職員として、現場の先生ではみることのできない授業料や奨学金などの費用面をはじめ、受験生や保護者への広報活動を最前線で対応し、今は大学職員として全国の高校生・保護者の声を入試広報の立場から直接聞いてきました。この三つの現場を内側から見てきた人間として、正直にお伝えしたいことがあります。

この記事でわかること
  • なぜ「大手予備校に入れれば安泰」という考え方が危ういのか
  • 塾を検討する前に、実は親子で見落としがちなことがあること
  • 入試方式が多様化した今、親にしかできないリサーチがあること

入試方式の多様化時代、親にしかできないリサーチがある

大学職員として入試広報に携わっていると、今の大学入試がどれほど多様化しているかを日々実感します。

年内に実施されるAOや指定校推薦のような入試に加えて、年明けの一般入試自体も大きく多様化しています。2教科だけで受験できる方式や、英検などの外部スコアを活用できる方式など、選択肢は数年前とは比べ物にならないほど広がっています。

この中から、自分に合った入試方式を見つけ出すのは、想像以上に骨が折れる作業です。AIに相談するのも一つの方法ですが、実際に過去問を解いてみると、本人の得意・不得意とのミスマッチが見つかることも珍しくありません。AIにはそこを見極める力はありません。

入試方式を調べて、それを夕飯の話題にあげるだけで十分です!

もちろん、見つけてきた入試方式を無理に押し付けるのは絶対に避けるべきです。あくまで「選択肢を増やしてあげる」役割に徹することが前提です。

たとえば、多くの大学が用意している併願割引制度。調べてみると想定より安く受験できることが分かり、結果としてもう一つ出願先を増やせる可能性が出てくることがあります。お金を出してあげるのは保護者の皆さまのことが多いと思います。しかし予算は有限です。そんな時に、併願割引を使いこなし、出願先を増やすことができるというのは、保護者の方にしかできない大きすぎる「受験戦略」です。

勉強そのものはお子さんに任せ、入試方式の傾向や、お子さんの得意分野に合いそうな選択肢を見つけてくる作業は、親御さんが担うという分業戦法です!

「大手予備校に入塾すれば安心」という思考を、まず一度疑ってほしい

大学受験を控えると、多くの保護者がまず考えるのが

「とりあえず大手の予備校に入れておけば安心」という選択です。

大手予備校にいた私としても、この感覚は大いに理解できます。

実績も豊富で、合格者数も多く、カリキュラムもしっかりしている。安心材料としては十分すぎるほどです。我々もそれらの安心を常に皆さまにご提供できるように、日々努めておりました。

ただ、元予備校スタッフとして正直にお伝えすると

大手予備校の授業には、ときに200人規模になるようなものもあります。

これだけの人数を相手にする授業を任される講師は、間違いなく実力のある人気講師です。話の構成力、聞きやすさ、生徒を引き込む力は本当に高いレベルにあります。授業後の質問対応が丁寧な先生が多いのも事実です。ですから、大手の大人数授業そのものを否定したいわけではありません。

問題は、その授業から何を得られるかが、生徒自身の能動性にかなりの部分を委ねられてしまう構造にあるということです。

同じ教室で同じ授業を受けていても、自分から質問に行く生徒と、ただ座って聞いているだけの生徒とでは、半年後の伸びがまったく違います。これは予備校の現場にいた人間として、何度も目にしてきた光景です。

「大手に入れたから、もう安心」で安心してしまうと、肝心の「うちの子は能動的に動けるタイプかどうか」という視点が抜け落ちてしまいます。

ここを見極め、必要であれば個別指導など別の選択肢も検討する。それも、保護者の方にできる大事な役割の一つです。

お子様のタイプを一番理解しているのは、

保護者の皆さまの他ならないのですから。

塾の前に、学校の先生を使い倒せているか

学校の授業だけでは大学受験には絶対に足りない」と考えて、早々に塾を検討する保護者の方も少なくありません。

昨今の大学受験方式の多様化を踏まえると、これはほぼ事実と言ってもいい部分ではあります。

ただ、高校事務の現場を見てきた立場から言うと、ここで保護者の皆さんに一つできることがあります。

塾を探し始める前に、「学校という場をどれだけ使い切れているか」を一度棚卸ししてみることです。

学校の先生も、勉強を教えるプロです。

そして「学校の授業だけじゃ足りない」と感じている家庭の多くは、実はお子さんが学校の先生にほとんど質問に行っていません。「あの先生は教えるのが下手だから」というような、もっともらしい理由を見つけて、質問という行動そのものを避けているケースが多いというのが、現場で見てきた実感です。

ここで皆さんが「質問しに行きなさい」と口で言うだけでは、結局また過干渉になってしまいます。そうではなく、保護者の皆さまにできるのはもっと手前の準備です

たとえば、三者面談や個人面談の機会を使って、親自身が担任の先生に「うちの子は質問に行けるタイプかどうか」「どの教科のどの先生なら相談しやすそうか」を直接聞いてみる。これだけで、家庭での声のかけ方が変わります。「あの先生、質問しやすいらしいよ」と一言添えるだけでも、お子さんが動き出すきっかけになることは少なくありません。

また、学校に通っている時点で、すでに安くない学費を払っています。授業料無償化が進み、以前より家計の負担感は下がったとはいえ、教材費やICT端末代など、学校生活にかかる費用は決して小さくありません。すでに払っているこのコストをどう使い切るかという視点を持つこと自体が、保護者の方ができる戦略の一つです。

もしお子さんが先生への質問を活用できれば、得られるものは教科の理解だけにとどまりません。定期試験の出題傾向をつかみやすくなり、結果として学内成績が上がれば、指定校推薦のような選択肢も見えてきます。先生は忙しいとよく言われますが、質問されて嫌な気持ちになる先生はほとんどいません。喜んで教えてくれることのほうがずっと多いというのが、高校現場で見てきた実感です。

うちの子は学校の先生をどれだけ使えているか」。これを親自身が把握し、必要なら橋渡しをしてあげる。それが、塾を検討する前の一歩になります。

学校を最大限に有効活用したうえでの塾選びは、足りていない部分の補完といった、まったく違ったものになるはずです。

まとめ:親の役割は「管理」ではなく「情報の目利き」

ここまでお伝えしてきたことをまとめると、次の3点に集約されます。

まとめ
  • 多様化する入試方式の中から、子供に合いそうな選択肢を親がリサーチする
  • 塾の前に、すでに払っている学費分、学校の先生を使い倒す
  • 「大手に入れれば安泰」なのか、子供の能動性を見極める

どれも「勉強しなさい」と声をかけることとは違う、親にしかできない役割です。とはいえ、入試方式のリサーチや塾選びの情報収集を、すべて自分一人でやるのは正直なところ簡単ではありません。情報収集の負担を減らしたい方は、塾・予備校選びについてまとめた記事もあわせて参考にしてみてください。

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前島 健太郎
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